「陶器の山」
香川県には讃岐七富士と呼ばれる形の良い里山が七座ある。その中には数えられていないが、香川県の中央部綾川町の田園風景の中に端正な姿でぽつねんと座っているこの十瓶山は別名を陶富士(すえふじ)といわれ、標高216mながら七富士に勝るとも劣らない美しい山である。 陶富士という名の由来の通り、この地区は「陶(すえ)」とも呼ばれ、古墳時代から平安時代にかけて須恵器(5世紀前後に百済から伝わった高温で焼く青灰色の素焼き土器)製造の地であったようで、良質の粘土と燃料である多量の木材に恵まれた十瓶山や隣の火ノ山周辺からは須恵器や瓦の窯跡が100箇所以上も発見されており、陶窯跡群・十瓶山窯跡群と称されている。 その陶器の遺跡群から「瓶」の意を連想させるこの山には、いまひとつ、その昔この地方の長者が黄金を十個の瓶に詰めてこの山のあちこちに埋めたので十瓶山と呼ばれるようになったいう由来がある。長者殿は目印としてサカキの木を植えたのであるが、昔からこの伝説を耳にしたいろいろな人に、山中のサカキの木を掘り返され、今ではサカキの木はなくなってしまったとのオチまでついている。ご存知、サカキは神事に用いられる神木でもあり、埋蔵金の目印とされることが多い「キーワード」のひとつなので場所特定としての信憑性はいまひとつなのであるが、生命力の強い常緑樹のことであるので、現在では再び蘇生しているかもわからない。サカキは6月ころに白い花を咲かせるので、その時期の散策の際には植物図鑑がまず必携であろう(笑)。
|
「田園風景の中の十瓶山」
田園風景の中の十瓶山
「十瓶山山頂付近」
十瓶山山頂付近
「十瓶山登山口」
十瓶山登山口
「山麓にある綾川町総合運動公園、公園内に平安前期の須恵器の窯である「すべっと窯跡」がある。」
山麓にある綾川町総合運動公園、公園内に平安前期の須恵器の窯である「すべっと窯跡」がある。
「讃岐の国造の祖といわれる猿留霊王の墓が麓近くの田園地帯に残る」
讃岐の国造の祖といわれる猿留霊王の墓が麓近くの田園地帯に残る
|