「幸運をもたらした仮墓」
ジョン万次郎こと中濱萬次郎は、土佐清水が生んだ幕末の偉人である。坂本龍馬のようにダイナミックな交渉をした自由人でもなければ、武智半平太のように理想を掲げて人を育てたカリスマでもない。難波して無人島で生き延びていたところを捕鯨船に拾われてアメリカに渡り西洋の文化と言葉を習得して帰国し維新前夜の日本に多大な情報をもたらしたというユニークな人物である。 様々な流転を重ねたその生涯であるが、多くの幸運にも恵まれている。なんといっても太平洋の無人の鳥島で捕鯨船ジョン・ホーランド号に発見されたこと。そして一同が降ろされたハワイでもホイットニー船長に気に入られアメリカ本土に渡って船長の養子になったこと、そして帰国資金の充ての無いときに丁度西部でブームになっていたゴールドラッシュで一山あてたことである。 土佐清水市の中浜家代々の墓には萬次郎の祖母が行方不明になった彼を偲んで祈ったという仮墓が残っている。生き残って帰国した本人は東京青山に葬られているが、家族の彼への想いが通じてこの幸運を引き寄せたのかもしれない。 よく、こういった偉人の運にあやかろうと有名人の墓の欠片を持ち帰る不届きな輩が日本中にいるのだが、彼の様々な幸運は、143日間も無人島でも諦めなかった執念や、まったく未知の米本土に渡るチャンスに一歩踏み出せた前向きな心、異国の地でたった一人の日本人として言葉や学問を学んだ向上心あってのことである。幸運の女神は自らを助ける人に舞い降りるのである。
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「足摺岬に建てられた萬次郎の銅像。」
足摺岬に建てられた萬次郎の銅像。
「生誕地の中浜に復元された生家。」
生誕地の中浜に復元された生家。
「中浜の集落にある小高い丘を登ると」
中浜の集落にある小高い丘を登ると
「中浜家が代々檀家とする大覚寺」
中浜家が代々檀家とする大覚寺
「墓所の一角にある中浜家の墓 ここが萬次郎の仮墓でもある。」
墓所の一角にある中浜家の墓 ここが萬次郎の仮墓でもある。
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