「国産み神話の島は川の中にあった」
四国を東西に横断する吉野川の河口より約50キロの上流にあるにある中鳥地区に奈良時代に建てられた神社である。もともとは吉野川南岸であったが1726年の大洪水で切り離されて川中島なった。さらに治水整備工事により平成4年に北岸である当地に移築されたという、まさに水によってうつろった神社であるが、神社本体は過去のいかなる洪水被害にもあわなかったと伝えられている。 イザナミ命は、国産み神話においてイザナギ命とともに日本国土を産んだ神である。自身の死後、死者の世界である黄泉国(よみのくに)まで会いに来たイザナギ命を黄泉比良坂まで追ってきた後、黄泉津大神として黄泉国を治める神となった。 日本全国にイザナミ命を祀る神社は数社あるが単独神として祀る神社はここだけである。主に古事記の神話は島根県出雲地方に起源があるという説は根強いが、イザナミ命が最初に産んだのが淡路島であったことを考えても、位置的にこの阿波国には古代において何かが由来していたとの説も一理あるのかもしれない。 神社も民家も移設され、川の中の丘となってしまった旧中鳥であるが、由緒ある神社の跡地を慮って平地に取り崩されることもなく、これからも余人を拒んだまま吉野川の流れの中で歴史を見守っているのである。
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「現在の神社。吉野川の堤防の外にある。」
現在の神社。吉野川の堤防の外にある。
「神社正面」
神社正面
「今は川中島となった中鳥島を北岸より見る。 この丘陵部にもともとの神社跡がある。」
今は川中島となった中鳥島を北岸より見る。 この丘陵部にもともとの神社跡がある。
「同じく南岸からの中鳥。護岸工事でもこの島だけは手をつけずにいるとのこと。」
同じく南岸からの中鳥。護岸工事でもこの島だけは手をつけずにいるとのこと。
「神社内にあった戦国時代中鳥城の城主浅野但馬守の墓も移設されている。」
神社内にあった戦国時代中鳥城の城主浅野但馬守の墓も移設されている。
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