「平家再興の宝と名も無き犠牲者」
徳島県もここに来てようやく埋蔵金伝説らしくなってきた。 屋島の合戦に敗れた平家一門の中で、壇ノ浦に向かわずに落人となった一団、あるいは影武者と入れ替わった安徳天皇の一行は、徳島県の祖谷に逃れた。これは後々の多くの札所で見られる「安徳天皇潜幸説」へと続く四国全土をまたいだ壮大な伝説の一環である。 源氏の追っ手を逃れた平家一門は、三加茂から祖谷に山越えするこの間道で、6人の強力(ごうりき 荷運び案内人いわゆるシェルパ)をやとって平家再興の物資財宝を運ばせた。途中で「芽の窪」という地にたどりつくと、そこを軍資金や財宝を隠す場所と決め埋蔵したのである。秘密が漏れることを恐れた平家一族は、強力達を帰すときに密かに後をつけ、この峠で殺害してしまったという。後に金丸城主となった平家盛は祟りを恐れ、峠に6つの地蔵を建て霊を弔ったというのが、六地蔵峠に残る伝説である。 「芽の窪」なる地点がどこであるかは不明であるが、祖谷にある落人伝説と強力の帰り道の距離から推測すると、この峠から祖谷(東祖谷村落合)に続く山々のどこかであると思われる。この六地蔵峠付近にその鍵が残されているかもわからない。 いずれにしても、秘密を守るために関係した罪なき人間を闇に葬るというのは、古今東西の悪物フィクサーの掟であるらしい。日本全国各地に残る言い伝えに、城の抜け道を掘った労役者とか吊天井を作った大工とかが行方不明になった話は枚挙に暇がない。この伝説の真偽は別としても何か悲しいことがあった峠であるらしいことは、6つのお地蔵様が語りかけている。自然と手を合わせてしまう場所である。
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「峠脇の石囲い」
峠脇の石囲い
「いろいろなお地蔵様が奉られている」
いろいろなお地蔵様が奉られている
「石囲いの中の六地蔵」
石囲いの中の六地蔵
「今のお地蔵様は新しく直されているようである」
今のお地蔵様は新しく直されているようである
「峠付近から祖谷方面を望む」
峠付近から祖谷方面を望む
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