「剣山第二の山頂」
吉川栄治の大衆活劇長編小説「鳴門秘帖」で、幕府転覆の謀略を探るため阿波に潜入した甲賀隠密の世阿弥が監禁されていたのが剣山中・・・つまり目立つ剣山頂ではなくこの付近一帯のどこかの石牢である。「剣山」とは最高峰である標高1955m「タローギュー(一般に言う剣山頂)」だけではなく、稜線で1キロ西に結ばれた標高1929mの「ジローギュー」、反対に東に1キロの標高1879m「一の森」を含んだこのゾーン一帯を指す言葉でもある。この広い地区は阿波忌部(いんべ)一族(第5番札所参照)が興した山岳修験道の修行の地でもあったので、12番札所で説明した平家伝説をはじめとする聖地伝承はこの阿波忌部修験道信仰の影響も色濃くうけたものであろう。 その平家落人伝説中の「草薙の剣」はジローギューにこそ埋もまっているという説である。なるほど剣山頂から平家落人が馬の修練をしたとされる「平家の馬場」を挟んですぐ隣に見えるジローギューは、タローギュー剣山頂とそっくりの風貌でありながら、目立たぬようにそびえている兄弟山である。巨石文化や神社や伝説でいっぱいの剣山や一の森とは違い、まったく目立つ建造物の無いナンバー2の峰である。知恵者が隠すとしたら絶好の場所であるかもわからない。まさに裏剣山である。
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「剣山頂きから望むジローギュー」
剣山頂きから望むジローギュー
「ジローギューへのなだらかな稜線。よく整備されていて人気の登山コースでもある。」
ジローギューへのなだらかな稜線。よく整備されていて人気の登山コースでもある。
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